1977-07-01から1ヶ月間の記事一覧

R.H.の手記

友人のMが暴漢にナイフで刺されたというニュースを聞き、その日に予定されていた孫正義との対談をキャンセルし急いで病院に向かう。ルトワルスキをか けてくれという私の切迫した願いをどうしても聞き入れようとしないタクシーの運転手と激しい口論になり、…

R.H.の手記

ピアノに向かい、未来の音楽を担うであろうこどもたちのために練習曲を作曲する。グリッサンドとテンポの変化に主眼をおく。こうした感覚は、できるだけ幼い時期に養っておく必要があるだろう。 服部によるこどものための練習曲第53番

R.H.の手記

今日は新作のプロモーションのために来日しているソクーロフとの対談が予定されている日だった。死についてもっとも先鋭的な思考を続けている男と会う 以上、こちらもそれなりの心構えで出向かなければなるまい。トンネルを抜けると墓地だった。ソクーロフは…

R.H.の手記

奴隷を一列に並ばせ、私の裸体が何を連想させるかを言わせる。「夜明けにまさに飛び立たんとする白鳥」などという陳腐な美辞麗句で私を称賛した気にな り、得意げに他の奴隷を見回したFは肥溜めに逆さ吊り、糞尿まみれで窒息死がふさわしかろう。相手の反応…

R.H.の手記

編集者のSと新しい著作「しんがりは俺に任せろ。背中が語る経営戦略─知っていますか?かつて「退却」のことを「転進」といっていた時代があったこと を」の構想を詰める。後ろを前とすることで恐怖は上昇する磁気嵐となり、私たちを照らす光を発生させる。そ…

R.H.の手記

私が首席チェロ奏者をつとめる服部祝祭オーケストラの定期演奏会。一年間、この日のために研鑽を積んできた我がオーケストラ、演奏前から張りつめた空気が支配する。曲目は、「毒蛇の呪い」「知っててわざと罠を踏む」「俺として君を生きる」「崖っぷちに俺…

R.H.の手記

家に帰ってみると書きかけの原稿の語尾が全て「だは」に変わっていた。「・・・つまり、こうしたジオ・ポリティカルな機能様態を持って偏在するイデオ ロギー=霊を批判するには、古典的な哲学的思惟の徹底=勃起のみでは不完全だと思われるのだは」。新顔の…

R.H.の手記

夕暮れ時、東の空に竜を見る。吉兆か?

R.H.の手記

世界で最も権威ある医学雑誌のひとつ、『ランセット』に私の論文が掲載された。四国のとある小さな村で発見された特異な風土病についての考察。この村には「御山さま」と呼ばれる聖域があって、そこに入った者は一週間ほどで全身の骨が腐敗する。骨以外の部位…

R.H.の手記

世界でも珍しいイリ・トルコ語の最後の使い手としてCNNのインタビューを受ける。昨今の国際情勢の所感を述べた後、やんわりとアメリカの現政権批 判。イリ・トルコ語だったので何を言ったのかわからなかったらしい。若松音頭で喜んでもらう。失われつつある…

R.H.の手記

通勤途中の山手線で車両の隅に女子高生を追いつめ、脅えのあまりうつむくことしかできない彼女の耳元で妖怪の名前をささやき続ける。我に返ると2周もしていた。震えるばかりで動くことも出来ない彼女を駅のトイレに連れ込み「かかと」の恥ずかしい写真をさん…

R.H.の手記

飲み屋でまたけんかだ。いさかいにはなんの関心も無い私は、だまってその様子を眺める。小便を漏らしてしまった。

R.H.の手記

馬鹿には見えぬ服を着て母校を訪ねる。赤い絨毯を丸めていたら、門のところで用務員にしたたかにぶん殴られる。馬鹿には困ったものだ。ファシストの気持ちがわかる。

R.H.の手記

貧民を町から一掃した功績を買われ石原新党から立候補の打診があるが、チックの伝染を懸念し丁重に固辞。

R.H.の手記

「汗をダッチワイフに変える能力」がレベルアップし「淡い恋心を火の見櫓に変える能力」を得た。私としては「毒蛾の燐紛を胡麻に変える能力」が欲し かったのだが。とまれ、次のロベルト十団入りは確実だろう。

R.H.の手記

少数民族の生態を報告する映画を見る。面長のぼけ老人と薬漬けのトラウマ刑事が勤める警察では、飼っているイタコに赤や茶色の玉 を吐き出させて犯罪を 予防している。法を遵守することしか出来ぬ哀れな小男の登場で組織は崩壊。トラウマ刑事は部下と骨肉の…

R.H.の手記

いずれ私が住まうはずの一国一城を砂場でデザインしていると、青二才共がさっそく群がって私の将来を台なしにしようとし始める。こんな年から上り調子 の人間をかぎ分ける能力だけを研ぎ澄まし日々を送っているとは。もちろん、相手が女であろうと子供であろ…

R.H.の手記

数日前に女優と話したり出演依頼が来たせいか映画のアイデアを思いつく。八郎潟干拓問題を苦悩する役人の側から描いた『勝手に干上がれ』、日本神話に 題材を取り、魅力的なアラン・ドロンを主役に配した『太陽はダイダラボッチ』等。私は映画に興味が全く無…

R.H.の手記

口の中に人面瘡ができた。デヴィ夫人の今後について激しく討議。

R.H.の手記

都内某所にある浄水場を視察し、水にハブ酒を混入。これで長寿番付は沖縄を抜いて東京がトップにおどりでることだろう。

R.H.の手記

天井から水が滴っていたので雨漏りかと思ったら餓鬼魂のエキスだった。わらわらと群がる餓鬼の群れを小指ではじきながら、アンニュイな夜を過ごす。

R.H.の手記

グラビアアイドルから女優へと脱皮しつつあるHと会食。スクリーンデビューとなる新作『つねっていいのよ』の感想など。シャワーを浴びる前にコトに持 ち込むのが好きな私は股間を洗浄するためトイレに立ったのだが、その隙にHを人質にとられてしまった。うな…

R.H.の手記

同僚Yの右の乳首を三時間しゃぶり続けた後、ボードレールのダンディズムを会得する為に新宿西口へ向かう。貧民達を一人残らず殴り倒し、ありったけの 小銭を力任せに投げつける。貧民達の身体にめり込んだ小銭はまるでカラータイマーのように赤く染まり、彼…

R.H.の手記

鬼踊りを覚える。

R.H.の手記

朝起きてみると寝小便が鶴の模様を描いていた。縁起が良い。奴隷を二人呼び、ていねいに、やさしく、じっくりと、きままに、匂いを鼻先で転がしなが ら、もう二度とこんな戦争は起こさないと誓いながら、厳粛な綱渡りのように、そして愛し合う二人のように跡…

R.H.の手記

立ち寄った飲み屋でけんかの仲裁をする羽目になる。「本気」と書いて「ふぐ」と読むという相手のユーモアセンスがどうしても許せなかったのだといきり たつ片一方の男に対して、もう一人はフランクフルト学派的な観点から自らの知的正当性を切々と訴える。そ…

R.H.の手記

家に帰ると見覚えのある外国人女性が来ていた。ハリウッドの出演交渉に来日しているエージェントの女性だということに気付く。何年も前から『ランボー 17・憤怒のシベリア』への出演依頼が来ていたのだった。そのために身体を鍛えていたのだったが、最近すっ…

R.H.の手記

夜明けの空を眺めていたら、私の荘厳な心持ちに魅かれて小鳥が舞い込んでくる。よほど私のことが気に入ったらしく、自分から鳥籠に入る。私は早速その 小鳥に放射能を浴びせ、何分生きていられるかを観察することにする。久しぶりだったのでウランの扱いを誤…

R.H.の手記

某オーケストラのコンサートマスターであるM氏と会食。話題は新しい常任指揮者に対する不平に終始。愉快な一時とは言い難かった。リストランテを出たのち、下品な居酒屋へ。M氏を泥酔させてから縛り上げ、梱包。たとえいかなる指揮者であっても、コンサート…

R.H.の手記

猪の牙に父母の名を刻んだ後、凧糸で犬歯にくくる。廊下を全速力で100往復。