R.H.の手記

わたしの屋敷はひとりで住むには少々大きすぎるようだ。腐臭がするので普段使用していない部屋の扉を開けてみると、鎖につながれた死体を発見した。制限時間内に鼠をかみ殺せるか、というゲームに負けた奴隷に罰を与えるため、アンティークの甲冑を着せたまま監禁し、そのまま忘れてしまっていたのだ。これは迂闊。いったい何を思いながら死んでいったのだろうか。兜のなかから彼女がなにかを語りかけてくるような気がする。灯りをつけてみると、床にひっかいたような傷がある。足で書いたのだろう。「アリガトウ」とよめる。激しく嘔吐。別 の奴隷に命じ、部屋ごとコンクリートで封印した。リビングルームにてエノケンの『孫悟空』鑑賞。