R.H.の手記

私がゴーストライターをしている無能な作家のYが自殺。戯れに著者紹介の欄に「趣味:夜の公園で若者狩り。フットワークの軽さには自信がある。レイプ し終わった後、気絶した少年の股間にスタンガンを当てる瞬間に比べたら、仕事明けのビールなど一月前の小便にすぎないと気付きつつある26歳」と書いた ところ、各方面から苦情が殺到したのだそうだ。家のガラスが割られるなどご愛嬌、受話器を取るなり「豚」と500回繰り返されたり、「家族を人質にとっ た」などと言われることもあったそうだ。その程度にはびくともしなかったらしいのだが、義憤にかられたテロリストに帰り道私が書いたのと同じことをされ てしまったらしいのだ。道端で尻にスタンガンをはさんだまま気絶しているところを通 行人に発見されたのだという。しかしそれも直接の自殺の原因ではな かったらしい。Yはそれ以来、毎晩ひとりで公園をふらつかずにはおれなくなってしまったのだ。一度など、若い女性に「あててくれ!!」と鬼気迫る面 持ち でスタンガンを無理やり手渡そうとした事もあったという。ちなみに死因は感電死。股間にスタンガンを当て絶命しているところを細君に発見されたのだ。果 たして自殺であったのかどうかははなはだ疑わしいのだが、しかし私は自殺であると信じている。その証拠に、Yが死ぬ 前日に彼からの小包みが届いたから だ。中身は新しいスタンガンだった。手紙が一通 添えられており、そこにはこう書いてあった。「止めてください」。「やめてください」なのか「とめてくだ さい」なのか二通りの読解を許容するテクストだが、私は後者に取った。彼は刺激を求めてさまよわざるを得なくなった自分自身にもっとも苦しんでいたの だ。スタンガンを握りしめつつ、当てどもなく夜の公園をさまようYの姿と暴走を始めた彼の中のデーモンに思いを馳せる。後日、彼の期待に応えられなかっ た自分の不甲斐なさを恥じつつスタンガンを胸にYの葬儀へ。葬儀中、Yの細君に灰を投げつけられる。織田信長の憑依か?。位 牌を振りまわしながら狂った ように叫び出したのでみなを帰らせる。気を落とす細君を慰めるために睡眠薬を飲ませ、私のエキスを幾度も注入した後、恥ずかしい写 真を撮影。目を覚まし た細君に、返して欲しくばキャッシュで10万用意するよう言い放って絶望という名のカタルシスを経験させたのち股間にYからもらったスタンガンを押し当 てる。最大電力で。これで借りは返した。帰りの電車の中、天国で二人仲良く暮らすさまを想像し少し嬉しくなる。