R.H.の手記

朝起きてみると寝小便が鶴の模様を描いていた。縁起が良い。奴隷を二人呼び、ていねいに、やさしく、じっくりと、きままに、匂いを鼻先で転がしなが ら、もう二度とこんな戦争は起こさないと誓いながら、厳粛な綱渡りのように、そして愛し合う二人のように跡形も無く寝小便を舐め取ることを命ずる。しば らくして戻ってみると、純白どころか笑福亭鶴瓶の模様になっていた。その醜いまだらを即引き裂いた私は、罰として男の奴隷を油が煮えたぎる鍋の上に逆さ 吊りにし、女の奴隷には男の足に結んだロープを噛ませる。この二人が二十年前に生き別 れた兄妹であることは伏せていたのだが、男の尻の星形のほくろでそ れに気付いた妹が兄の名を叫ぼうとした途端兄は鍋の中に消えていった。兄の名を絶叫しながら狂ったように水蒸気をかき抱く妹に私がしてやれることといっ たら、二人を天国で再会させること以外にあるまい。小指でそっと彼女の背中を押してやる。その瞬間彼女の足にゴムを結びつけバンジージャンプ状態にして おいたので、さまざまな段階の溶け具合を観察することができた。己の機転にちょっと上機嫌になった私は、会社でみなに私のことを「発明王」と呼ばせるこ とに決めた。こうした悲劇が不可避である現代社会に対する義憤が沸き起こるが、毎日の朝の体操「グワレラ」を終える頃には爽快な気持ちに戻った。今日は 遅刻しないですみそう。