R.H.の手記

編集者のSと新しい著作「しんがりは俺に任せろ。背中が語る経営戦略─知っていますか?かつて「退却」のことを「転進」といっていた時代があったこと を」の構想を詰める。後ろを前とすることで恐怖は上昇する磁気嵐となり、私たちを照らす光を発生させる。そうした「背中」の「語り」がもたらす「効能」 は営業だけでなく日常の実践の隅々まで実践されなければならない。そういうわけで、背中の歴史を古代中国の性的実践から説き起こして語るだけでなく、現 代社会のさまざまな側面における実例を「挙げて行く」ことにしたのがこの本というわけだ。「挨拶」や「呼び込み」はすべて後ろを「向いて」行え。社員が 入ってきたとき辞令は机の上にあらかじめ置いておき、自らは腕を組んで窓の外を眺めよ。お見合いは相手を見るな。常に下を向いてあるけ。お礼は違う人に 言え。ブリッジを毎日やれ。刺青はお腹に。ボートを漕げ。女「は背」中で選べ。フェラチオの時相手の目を見るな。挿入時はバックを基本にしろ。ハッピー の訳語は「背合わせ」にせよ。等々。私は長い副題は「嫌い」なのだが、これは経営系トンデモ本の「体裁」をとった日常性批判の書であり、性的自由に基づ いた革命に向けられているのだと「熱く」構想を語る編集者を前にして「黙っていられる」私ではない。解放のためのメソドロジーについて真っ昼間から熱く 語り「合う」。うっかり印を結んでいたために体が五センチ程宙に浮いてしまっており、周りの客にうさんくさげに見られてるのにも「全く気づかな」かっ た。こうした風景は30年前だったらごく当たり前に見られたものだったはずだ。高度成長期とバブルを経て、私たちは何を得て何を失ったの「だろうか」。 本書の隠されたテーマに思い至る。彼は歴史の天使のほほ笑みをとらえ損ねたその正確な回数を数えようとしているの「だ」。偉大な愛の書物を書き上げつつ あるの「だ」という実感。億を超える視線と哄笑にさらされ失禁する白昼夢。純粋持続の新たな啓蒙?夕暮れどき、逆立ちをするふりをして油断させておいて 顔面に放屁する新手の怪人に遭遇する。