R.H.の手記

雨が降り止まない。久々の野外乱交パーティー(雨天中止)が台なしになりそ う。軒にもう3人ばかりてるてる坊主をつるしたのだが、一向に効き目がない。 と、その内の一人が激しく身もだえし始め、様子を見に駆け寄った110番(ひゃ くとうばん)がシーツを剥ぎ取ると、彼の顔に向けて白い液体を吐きだす。エボ ラ出血熱だ!!しかしおかしい。私の館にはいるための健康診断では、あらゆる 病気の可能性をチェックするはずだ。診断ミス・・・?侍従長を呼び出し、診断 項目をチェック。1類感染症がチェックリストから漏れているではないか!あれ ほど口を酸っぱくしてエボラには気を付けるように言っていたのに・・・・。厳 密な審査を経たものでなければ、この館に立ち入ることまかりならぬ 。何のため に3代遡って審査していると思っているのだ。このような杜撰さが許されて良い はずが無い。全員クビか・・・。しかしリストラしたばかりだし・・・。雇えば いいのか・・・・。いや、待て。エボラの潜伏期は2 〜21 日。・・・潜伏期間 が長すぎる。ということは館に住み始めてから感染したのか・・・。残念ながら 奴隷達の性的嗜好に寛容なこの館の衛生状態は必ずしも完ぺきとは言えない。清 掃もまた一種の嗜好として(髪とか口とかで)行っているからだ。遊び心が裏目 に?しかしここで後悔しては遊び心に失礼か?そもそも危険の伴わない遊びなど ・・・。いやそれは事前の思考であって今はとにかく問題に対処せねば。しかし いつ、どこで?密輸入した猿からだろうか?それもそんなに昔ではなく?・・・ ・血液交換プレイ!!一昨日(いっさくじつ)の!!あれか!!ちゃめっ気を起 こした誰かが猿から血を・・・。なんという機転。普段であれば奨励されてしか るべきユーモアだが、しかしまたしてもそれが裏目に・・。一体誰が?一人ひと り尋問するか・・・。並ばせて、ゆっくりと前を歩き・・・。目を見て、目を見 て話せよ・・・。気の弱いものはそれだけで白状してしまうだろう。しかし相手 がしたたかなタマだったら?・・・・・それにしても今後は制度を変えるかしな いのか。ジョーク禁止?しかし我々の遊戯、いや、生全体がそもそもジョークの ようなものではないか!!それをやめよというのか。何という理不尽な抑圧!! 私たちはこうした硬直した想像力に対して断固たる態度で挑まなければならない 。てるてる坊主はシーツをかぶったまま相変わらず激しくけいれんしている。社 会から余剰が失われて行く・・・。気が進まないが、これも後戻りのきかない時 間の流れか・・・・。それとも、そもそも私の寛容さに問題があるのか。やさし さだけでは駄 目なのだろうか。いつの間にやらそれは甘えに変容していたのだろ うか。メンタル次元の癒着が今回の悲劇の原因?いやそれよりも、他に感染者が いる可能性もある。範囲、規模を特定せねば。てるてる坊主が激しくせき込み白 いシーツが見る見る赤く染まってゆく。・・・まず隔離して、一人ひとりチェッ クをして・・・・いや、そもそも私だって無事かどうか・・・。誰が感染してい るにせよ、早急に血清を確保しないと。いやエボラに有効な血清は無いのだった 。どうする?そうこうしているうちに雨が止んで雲のあいだから日が差し込んで きた。さて、出かけなくては。