R.H.の手記

新宿区の一日署長に任命される。たすきをかけるだけだと思っていたら婦警の 格好をさせられた。スカートが一日署長のアイデンティティと知る。パトロール 中、ヤンキー風の二人乗りを見かける。金属バットを二本振りまわし、道路にた たきつけながら走っておりはなはだ危険。ヘルメットをかぶり忘れていることを 指摘してあげる。もちろん実直に職務を執行しつつも運転している婦警の内股を なで回し続ける事を忘れる私ではない。ふとももといえば帰りの電車のなかでも 、"緑山高校バレーボール部"を読みながらもじもじしていた男の太股が私を撫で たので、おぞましさのあまりその男の太股をずっとなで回していた。殺られる前 に殺るというのが私の哲学だ。もちろん空いた手は反対側の老婆の内股に差し込 まれている。時間を無駄に使う私ではないのだ。男が読みづらそうにしているの で老婆を窓から車外へほうり投げる。快適な読書空間を作ってやったにもかかわらず、その男はうさんくさげにこちらに一べつをくれた後、私に見えないように ヤンマガを立てやがった。純然たる善意を信じることの出来ないニヒリスト、醜く哀れな忘恩の徒のカバンに『さぶ』をこっそり忍び込ませる。関係性の消滅こ そ至上の暴力。カバンを開けた時の細君の顔を思い浮かべながら、もう署長では ないことを思い出す。またいたずらに正義感を消費してしまった。次の日通勤電車で痴漢に遭って初めて衣装を着っ放しだったことに気付く。