R.H.の手記

僕らが老人になった世界はどういう物になっているだろうか。あまりよい世界 ではあるまい。老人たちにとっても若者にとっても。保障が覆い被さって身動き の出来ない少数の若者と、文字通 り身動きできない大量の老人。当然若者は老人 に不満を持つだろう。若者にのしかかる負担は、争いが露呈するのを好まない日 本人にすら耐えられないものとなるのではないだろうか。人種とかイデオロギー で差別 を叩いているうちに、年齢で差別される日が来るだろう。待っているのは 老人大虐殺だ。しかし、年功序列が撤廃されていたとしても、制度は相変わらず 老人にとって都合のいい物となっているだろうし、不満を予期した老人たちはあ らかじめ対抗策を練って不安分子の出現をあらかじめ回避しようとするだろう。 若者大虐殺だ!!そうして数少ない若者がますます少なくなる一方、老人同士の 差別 化も大きくなっているだろう。勝ち組と負け組ははっきりと別れるだろう し、先のない上に負けを宣告された老人の不満がどのようなものになるかは想像 もつかない。メンタルケア等というきれいごとが通用しない世界はもう訪れてい る。負け組の老人は否応なしに孤独に放り投げられる。そうなると今度は老人同 士大虐殺だ!!いずれにしても大虐殺だ。これを避けるには、若さの概念を変え るしかない。体が若いのが若さではない。若さとは死について考える能力の事 だ。死について考えて初めて人間は時間の中に置かれる。どんなに活動的に動き 回っていても、死を考えない限りそれは単なる生物体の活動でしかない。若者と は、すべてを通り越して死について考える者の事である。