クーポン

すっかりお世話になったモモ&ダニエル夫妻に別れを告げ、空港に向かう。ちょっと時間に余裕がありそうだったので323に寄る。マークとコーヒーを飲みに行って、ついでに各種相談事。confront次のリリースは鈴木昭男デヴィッド・トゥープのデュオだそう。帰る間際、Random Acousticから出ていたチューバのMelvyn PooreのCDを中古でみつけたので買って帰る。意外に長居してしまった。多少焦りつつ地下鉄でヒースロウへ。掲示をみると、僕の便は約一時間の遅れということなので、急いで損したと思いつつ英国航空のカウンターにいくと、申し訳ない、あなたの席はなくなりました、と言われる。一瞬おっしゃる意味がよくわからなかったが、どうやら機材トラブルで飛行機を変更せざるをえなくなったが、一回り小さいのになってしまって、席が足りなくなったんだとのこと。結局、夜9時のJAL便にふりかえてくれて事なきを得るが、空港で9時間ほど時間をつぶすハメになる。時間つぶし用ということで空港内で使えるクーポンをくれた。でも、これがあまり浸透していないようで、コーヒー一杯飲むのになんだか立派な方が引っ張り出されてきて確認をとったりするため、なかなか面倒である。とくにすることもないので壁を見つめながら考え事したり、あちこち電話してみたり。ようやく搭乗。ガラガラだったので三席確保できた。座席下にコントラギターも収納できたので一安心。JAL便はもちろんよいサービスなのだけれど、いまいちペーソスに欠けるな。去年のったトルコ航空のような、天井からウィーンとモニターが降りてきてなにも映らないとか、救命用具の使い方ビデオだけなぜかフルCGとか、そういうズッコケをこれからの飛行機会社には期待したい。でもJAL、一席ずつに与えられたモニターではいろいろな機能が満載だ。ゲームもできるし、ハードディスクから読み出すシステムなのだろうか、好きなときに好きな映画を見れる。プログラムもなかなかおもしろそうだ。はじめは頭もボーッとしていて、新たな情報をいれるのはしんどかったので、来るときにもみた『スクール・オブ・ロック』をもう一度みてみた。今度は字幕つきなので本作に対する理解がより深まったが、深めるほどの意味がそれほどあるのかははなはだ疑問だ。でも楽しかった。ベースの子がいい。それから、『深呼吸の必要』という映画をみる。サトウキビ刈りのバイトのため沖縄にやってきた互いに接点のない若者たちが、それぞれ心に負い目を持ちつつも一緒に作業をするうちに絆を深めていく、というはなし。でもなんで絆が深まっていくのかの描き方が中途半端なので消化不良な感あり。特に長澤まさみ演じる高校生は、最初は周囲を完全に拒絶し口もきかないのに、その理由も心の転機もなにも描かれないままある日突然絆が深まる。でもこの人は逸材だとおもう。まわりから浮いてしまっているたたずまいがイイ。『ロボコン』もよかったけれど、ほとんどセリフもなかったように記憶しているが『黄泉がえり』の中学生役がたいへん印象的で、あの端役のせいであの映画がすごくよいものになっているように思えてならない。それから、あかりの消えた機内で、妙に身なりのきちんとした年配のご婦人が真っ白な顔をしてゆっくりと歩いているのをみた。歩いていると言うよりは、立ったまま平行移動をしているかんじ。通路をぐるりと一周してどこかにいなくなってしまった。その時はなんだかかわった人だなという印象だったけれど、後から思うと、あれは飛行機に住む幽霊ではなかったと思う。