ペンチで背骨切断

明け方、DVDにてトビー・フーパー最新作『ツールボックス・マーダー』を観る。鳥肌がたつ。壁の向こうに存在する永遠の闇。その深さはしかし人の手によるものだ。克服しようのない圧倒的な狂気の産物。怪人は生と死の狭間から生まれた。「黒魔術」という設定がかくも生々しく迫ってくる。2003年に撮られたとは思えぬ古典的風格。しかも斬新な恐怖。やっぱりトビー・フーパーはすごかった。虫博士がこの映画にラブクラフトを感じると書いていた。曰く「ドアの向こうに、この世ならざる存在がうごめいている感」。よくわかる。日常のすぐ隣に地獄の存在を実感してしまう瞬間。しかもファンタジーとしてではなく、あくまで現実として、ドキュメンタリーとして描くことができる。映画ってすごい。そしてまた、寺の脇にある石をどけると黄泉の国が広がっている、そんな世界観をペーソスで描いてしまう水木しげる先生もやっぱりすごい。付録映像のメイキングも面白かった。フーパーを慕い集ってくる職人達。いままでにない怖くて面白い映画を作ろうという意志でみなぎっている。でも日本じゃ劇場未公開なのだ。これも虫博士に教わったものだが、なんとアーカムが舞台だというフーパー新作。http://www.mortuarythemovie.com/ 果たして日本では映画館で観られるのだろうか?そしていま、朝八時、割り箸と輪ゴムを使った手品の解説をテレビで観ながらウォッカを飲んでいる。