R.H.の手記

いずれ私が住まうはずの一国一城を砂場でデザインしていると、青二才共がさっそく群がって私の将来を台なしにしようとし始める。こんな年から上り調子 の人間をかぎ分ける能力だけを研ぎ澄まし日々を送っているとは。もちろん、相手が女であろうと子供であろうとだまって見ている私ではない。私の城に指一 本触れられるものなら触れてみよ、子供たちよ。しかし、大人の余裕を見せねばならぬ 私が雲梯の下で銀色のスーツに着替えているうちに、私の未来はすっか り平坦にならされてしまった。いささかぼう然として立ちすくむ私に矛先を向けなおした子供たちは、今度は私を平らにしようとABCD包囲網で私を取り囲 む。気が進まないが本気を出さねばなるまい。クロロホルムを嗅ぎ、その場で昏倒。目が覚めると、衣服を全てはぎ取られた上に尻が真っ赤に腫れ上がってい た。眠っている人間に対する手加減すら知らないとは・・・・。あまつさえ家に帰って鏡を見ると、顔にマジックで「泉ピン子」と書かれていた。鬼不在の世 間を想起させることであいまいな和解を狙うその卑劣な根性にいったん憤死。どうにも収まりがつかなくなった私は寝込んだ隙を見計らって彼らの寝室に忍び 込み、全員並ぶと「コモンセンス」と云う単語になるように一人一人の背中に一文字ずつ刺青をいれ、眠っている両親の穴という穴に教育的指導を施す。むし ろ喜ぶものもいたが、そういう不貞な淫乱は気功法で内側から破壊する以外あるまい。もちろん泣きながら。永遠に消えない常識という呪いを背負い、同窓会 の度に我が身の不運をかこつがいい、子供たちよ。それにしても平らになってしまった私の未来が気になる。