R.H.の手記

今、私はロシアへと向かう船に乗っている。深夜になると、鎖を命綱にした潜水夫たちが、甲板から水面へとおりていく。私は黒パンと、ウォトカを飲みながら、それを船室から眺めていた。ふと、天上から光が差す。白い服を着た母子が、階段を駆け降り、水面をくぐっていった。使者? 私は知らぬ間に、ウォトカのグラスを床に落としていた。砕けた破片のひとつひとつに小さな口がうまれ、それぞれ「おとうさん、おとうさん」と私を呼ぶ。おお、よしよし、かわいいこどもたちよ。数時間後、引き上げられた潜水夫たちは絶命していた。奇妙なことに、外傷はなく、ボンベ内の酸素も満ちていて、また、全員両手を胸の上で組んでいたという。ゆかいななかまたちとロシアン・ジョークを交わしつつ、キャビアと納豆を交互に食べるハットリレシピを披露したところこれが大好評。ロシア語で、「ニジマスの従兄弟」という意味のあだなを授かる。