トビー・フーパー『死霊伝説』をみる。なぜだかよくわからないが、僕は中学校の時、ムルナウの『吸血鬼ノスフェラトゥ』をみてしまったという経験がある。で、この『死霊伝説』に映ってるの、これは間違いなくあの吸血鬼。なんたる風格。ここ最近、フーパーについて書くこと全部黒沢監督の受け売りでたいへん恥ずかしい限りだが、この監督は死人が歩こうと怪人が現れようと、信じがたくはあるが、すべて起こってしまった現実なのだ、と突きつけてくる。『悪魔のいけにえ』がその最たる例だが、古典的怪奇映画というべきこの作品でも、ある種ドキュメンタリー的ともいえるその手法は一貫している。吸血鬼ものではおなじみ、日没前に心臓に杭を打ち込むシーンに目を見張る。ノスフェラトゥの棺の回りに、生ける屍となった被害者たちが無造作に転がっている。うまく言えないけど、吸血鬼サイドの現実まで画面 に映ってしまっている感じが、恐怖をより生々しいものにさせる。あ、もちろん恒例の串刺しもありました。フーパーおそるべし。尊敬します。