ジャッセムが銀行にいくので市内見物がてらついていくことにする。車に轢かれそうになってもあんまり気にしないところがさすがベイルート市民。で、よく聞いてみると、銀行というのは彼のお祖母さんのことで、ようするにお小遣いをもらいにいくんだった。なす術もなくのこのことついていく。そのお宅はアメリカ大学の近くのカリフォルニア通りにあった。ジャッセムのいとこの姉妹がいたのだが、これがたいへんかわいかった。お祖母さんも米国ホームドラマにでてきそうな大柄で屈託のない好人物であったが、しゃべりだすと長いということで早々に退散する。あ、あと、彼のおじさんの写真をみせてもらったのだが、この人がすごい。MITの教授かなんかだったらしいのだが、解雇されて、今はアメリカの企業でミサイルの設計に携わっているという。ちなみにジャッセム一家はなんとパレスチナ人。地獄絵図をこんなところで発見! 30分くらい歩いたところ、日光のきつさに完全にダウンする。いくら日陰を歩いてもだめだ。体力の消耗がはげしすぎる。ぐったりしたままシャリフの家に移送され、大蔵さんはサウンドチェックに運ばれていった。シャリフ宮殿には自堕落な若者たちのたまり場なのであまりいると人間が腐るし、表に出るとぶっ倒れるので、いかんともしがたい。帰ってきた大蔵さんによると、サウンドチェックはまたすごいことになっていたらしい。暗いので電気をつけたら、ステージにみたこともないバンドが集結していて、ベースのやつにチョッパーをみせつけられたそうだ。持ち前の明るさでなんとか乗り切ったそうだが、さすがにシャリフがだんだんやつれてきた。しかし、サウンドチェックのたびに家から送り迎えするというこのシステムが非効率的だということをわかってもらうにはいったいどうしたらいいのだろう。例の如く開演時間を過ぎてから会場に移動。わりと普通のジャズクラブみたいなとこだった。フランツのソロはさすがだ。ハイテクニックだが手法を相当限定していて、小手先感はない。怪人ならではのお人柄がしのばれる怪演。オリビエ/クリスチーヌ/コンタンは終止しょんぼりした演奏。で、シャリフ/大蔵デュオ。一言でいうと、シャリフはなんというか、ゆるいんだけど、大蔵さんがシャコーとかいうだけでぜんぜん空気がかわってしまうのでびっくりした。終了後、シャリフ宮殿で打ち上げ。シャリフのお母さんがやけにはしゃいでいるなぁ。この人はちょっと脱衣婆に似てる。外でぼーっとしてたら、ハシシ農園の首領が来てたので驚いた。この宮殿、だんだん恐怖映画の古城に思えてきたよ。