チロル民謡

火曜に帰国するシュナイダー、ロメン夫妻に会うため再度八日市場に赴く。ここには山下りんのイコンを所蔵する東方正教の教会があり、できたら訪れたいと思っていたのだが、駅前の看板に書いてあった観光課の電話番号にかけると現在使われておりませんといわれてしまった。大学生のときお世話になっていた先生が亡くなった。あとで知ったのだが、奥さんがロシア系の方で、先生自身、正教徒だった。そのためお葬式がおこなわれたのがお茶の水ニコライ堂。急なことだったのでショックが大きかったというのもあるけれど、暗がりに浮かび上がるステンドグラスと、数々のロウソクに囲まれた棺をよく覚えていて、それからなんとなく正教会が気になってるのである。まぁ雨も降っているし、日をあらためてまた来ることにした。交通手段がないため駅からタクシー。うろ覚えの道を運転手さんに告げているうち、門のところで傘をさしたフロリアン君が待っていてくれた。ここ数日は下田や横浜にいって楽しく過ごされていたようである。日本にあるのもめずらしいものだし、ぜひ名手に見ていただきたいとおもってコントラギターを持参した。シュナイダーさんによると、ヘッドの形状から察するに19世紀のものではないかとのこと。思っていたよりぜんぜん骨董のようだ。ただまぁ値段が3倍くらいするだけあって、鳴りはやはりシュナイダーさんののほうがさすがによかった。こちらは1930年代のものらしい。夫妻がチロル民謡をいろいろ教えてくれた。田圃にかこまれた日本家屋にひびく脳天気なメロディー。ギターの弾き方についてもさすがに得るところが大きかった。歯切れのよいミュートがコツである。最後は三人で合奏。これはなかなか幸せな体験であった。あらためてギターっていいなぁとおもう。おみやげに持って行ったくず餅は評判がよかった。シュナイダーさんとコントラギターデュオも録音。ちゃんとチューニングしたので、相手の音に共鳴してこっちの弦が鳴るのがきれいだった。インスブルックに戻ったらいろいろ楽譜を送ってくださるとのこと。楽しみ。いろいろ宿題も抱えていたので日が落ちる前に失礼する。数日ご一緒しただけだがほんとうにすてきな方々であった。また近いうちお会いできればうれしいなと思う。