喜多郎

朝7時起床。朝焼けが美しすぎる。瓦礫の中に煤けた家具を配置したリビング・ルームでコーヒーを飲み、車でウィーン空港へ。無線インターネットが使えるのでメールをチェック。生まれたばかりの赤ちゃん写真が送られてきて一瞬ギョッとしたが、デヴィッド・グラブスからのご子息誕生情報だった。おめでとう。ドイツ、シュトゥットゥガルドへ飛び、そこから電車を乗り継いでスイス、フリブールへ。日曜なので程よい格安フライトがみつからず、価格優先でこういうバカげたルートにしてみたのが意外とスムーズに事は運ぶ。チューリッヒで乗り換えるときこれから三回一緒にやるトーマス・コーバー、ジェイソン・カーンに会う。2月に会ったばかりなのに急に老け込んだ感のあるジェイソン。二人目のお嬢さんが誕生したばかりだそうだ。おめでとう。会場はえらく広かった。ニルヴァーナがライブをやったこともあるという。PAが上質で、フィードバックを演奏の主においているジェイソンはやたら喜んでいる。対バンはクリスチャン・フェネス。11月にラディアンと一緒に日本に来るそうだ。そういえば、先日ウィーンのRhizでやったとき、DJがラディアンのステファン・メネスだった。開演前だれもいない客席を前に黙々とプレイを披露し、終演後はレコードをかけようとしたとたん案の定ラドゥに止められていたのが印象的だった。まかないディナーがやけにかしこまったフレンチスタイルで緊張する。私は中学三年生の時、ゲストで出演したジョン・アンダーソン目当てで喜多郎のライブを見に行ったことがある。妊婦専用入り口が設けられていることにまず驚いたが、大海原のようなシンセ音の洪水に、空間すべてを己の存在で満たそうとする強力な意志を感じた。フェネスのライブを観ながらそのときのことを思い出した。バスクサン・セバスチャンのレストランについて熱く語るフェネス。死ぬほど美味だそうだ。是非いってみたい。宿泊は今回のツアーはじめてホテル。当初はマッティンと二人でダブルベッドの予定だったが、とりはからいによりツインになった。