ネグリ

はやめに起床しビルバオ散策。町は活気づいている。教会にはいってみるがネオ・クラシカル風のBGMがながれていて興ザメ。旅行代理店にはいってリスボン行きの飛行機についてきいてみるがお値段高めなので断念。マッティンと待ち合わせて駅についてきてもらって夜行列車を予約。ビルバオから直通のはないので、ビクトリアという街までバスで移動するらしい。なんにせよ足が確保できて一安心。大蔵さんとも待ち合わせてバスク伝統料理を現代風にアレンジしたレストランへ。チキンラーメンやコンビーフに高級感をブレンドした味。たいへん美味しかった。大蔵さんは本日飛行機でリスボン入りするのでここでお別れ。私はマッティンの家へおじゃまする。最寄り駅は「ネグリ」という名前だった。郊外の閑静な住宅街、といいたいところだが、すぐ横を電車が通っている上、真向かいでなにかの大工事がおこなわれていてパワーショベルやドリルの音が一日中なりひびいている。泣く泣く仮眠をとり、マッティンとギターデュオなどを録音。ホットチョコレートの美味しい店があるというのでいってみたが売り切れ。かわりにお菓子を頼んでみたが、選んだのがたまたまご自慢の逸品だったらしく店の人はお目が高いとほめられる。死ぬほど甘いがたしかに美味しかった。が、一口で十分だ。バス亭でマッティンにわかれをつげ、ビクトリアへ。行き先がどこだかよくわからない乗り物移動は不安だがなんだがわくわくする。窓の外はもう日が沈んでいる。街灯はなく、空を山々が青みがかった黒の濃淡だけで区別できる。一時間ほどで終点へ。スーツを着た男性が荷物をとりにバス下部に入ったところ、扉が閉まり閉じこめられてしまった。悲鳴を上げる男性。あっけにとられたが運転手にお知らせして救出。一瞬の出来事だったが泣いていた。バス停から鉄道の駅まではすこし歩かなくてはならないらしい。せっかくなので閉じこめられかけた男性に道を尋ねると、土地勘はないがたぶん向こうの方だと思うと曖昧に方角を教えてくれた。出発までかなり時間があるので迷うのもまた一興と歩きはじめたが、本気で迷ってしまった。不安とともに人気のない通りをいくと突然大きな教会があらわれてびっくりする。何度か道を聞くうち最初のヒントが当てずっぽうだったことが判明。這々の体で駅にたどり着く。駅の周りはやけに静かである。人気もない。読書して時間をつぶし、夜行列車へ。コンパートメント。向かいの席にどぶろく状の酒瓶を片手に目を開けたまま昏睡状態に陥ったおじさんが座っていて、意識を取り戻すと延々はなしかけてくるので困惑する。