スウェーデン、パリ

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成田発。機内ではとなりの席がキプロス島の方で、コンサルティングの仕事をされており、なんとか協会の会議のため日本に来られていたそうである。おやつや飲み物をいただいたりして、親切な方だったのだが、いかんせん恰幅がよすぎてシートからはみだしがちなのがたまにきず。おかげで半日ちかく、二の腕同士をぴったりくっつけたまますごすはめに!次回、なんとか協会はぜひ彼にビジネスクラスを提供すべきだと私はおもう。『地球の静止する日』をみる。ロボの質量感はなかなかだったものの、無理やり家族愛要素をねじこんでいるところがいまいちなようにおもった。ヒースロウ空港ちかくで一泊。馬を何頭かみかけた。

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スウェーデンへ。フェスティバルはてっきりストックホルムだとおもっていたのだが、ホテルの場所を伝えたらストックホルムじゃないじゃないかといわれ、なにかを疑われたのか去年なんでヨーロッパにきたのかとかなにしてたのかとか根掘り葉掘りきかれるはめに。どこに行くかくらい調べておくべきであった。別のターミナルにディータが来ているとのことで、迎えの車に乗ったのだが、駐車場がなかなかみつからず同じところをぐるぐる回り続けて目が回った。のちにぜんぜん違うところを回っていたことが発覚した。会場はストックホルムから車で一時間くらいの小さな町であった。道すがら、石がおいてある小さな丘がいくつかあって、それらは10世紀ごろのヴァイキングの墓なのだそうである。運転手さんに聞いたところによると、スウェーデンにいたヴァイキングは勇壮な戦士でもなんでもなく、主として農民だったとのこと。しかしながら現代の彼らは、煮えたぎるヴァイキングの血を受け継ぐ者だと主張する傾向があるそうである。日本における侍精神とも通じるものがあるかもしれない。なんの間違いか一日はやくついていたリュウハンキルと合流。ビリー、ディータと散歩したりお茶を飲んだりする。夜、ホテルのロビーでザヴィエシャルルと会ってビール飲んだ。北欧の田舎町で世界各国の友人にあえるのはとても楽しいことである。

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ホテルの朝食で非常階段のJOJOさんとジュンコさんに再会。私は名所旧跡がすきなもので、この界隈最大というヴァイキング古墳ツアーを組んでいただいていたのだが、お二人もお誘いする。ブラックメタルのジャケにありそうな深い森、ひらけた一面の雪景色。そしてなぞの配列で並べられた石!ルーン文字!しかし、古に思いを寄せるというよりは、ごんぎつねとか、傘地蔵といったどこか哀しげな風情をかんじたのはなぜでしょう。コル・フラーはしきりにスキーがしたいという。ヴァイキングの古墳といえど、彼にとってはただ雪のつもった小高い丘というだけのようである。そんなコルのソロ演奏がすばらしかったです。いろいろ小道具はつかっているものの、ピアノの弦の音だけにフォーカスしているところがよいとおもいました。あとは地元のミュージシャンと、ジョジョさん、大友さんのセッション。でたらめな演奏なんだが、やはりジョジョさん、大友さんのギターの音にはこん棒で殴られるような芯の太さがあり、あと、火花をちらしたり暴れたりした挙句やることがなくなってしまってうしろのほうでマイクのセッティングを直したりしているもう一人のギターの人の背中になぜか哀愁がかんじられました。

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ハンキルがジョジョさんに占ってもらっているのを横でみているだけのはずが、いつの間にか私の話に移行。普段はまったく気にしないたちですが、言われるといろいろ思い出したり、思い当たることがあったりする。私の運をふさいでいるらしい鳥の影におびえながら数日をすごすはめになった。小さな町なので昼間は特にすることもなく、ひたすら散歩する。翌日の演奏の準備もする。うっかり部屋に米をぶちまけてしまった。フェス二日目。ザヴィエのソロがよかった。どこかワールドミュージックっぽいというか、いろんな要素がめまぐるしくあらわれ、ファンタジーな印象をうけました。そして非常階段!比類なきノイズなのはもちろんですが、なぜか深い歌心を感じ、こみあげるものがあった。

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さすがに昼間はすることがない。ビリーとディータとまた散歩して、昨日もいった教会にいき、昨日もいた鴨の群れを見る。フェス三日目。スヴェン・オク・ヨハンソンのソロがすばらしかった。この、なんともいえない枯れた味わいのユーモアはこの人にしかだせないであろう。スヴェンさんがアクセルたちとやっているクールジャズカルテットもすばらしいのでぜひ多くの方に聞いていただきたいものである。私がよかったですというとなぜか白い目で見られるので本人には伝えなかったのですが、Filamentも感動的でした。確固たる信念に基づいたユニットだとは前々からおもっていましたが、今回みて、それに加えてなんだかすごく自然体なかんじがしました。自分のセッティングがあったため坂田明トリオは見れず。私のソロは、ものの振動音やサンプルもやや用いたものの、基本的には手拍子を中心した演奏を試みてみました。演奏前むちゃくちゃ緊張してしまったんですが、なんだかヘンテコなものをやったぞという確かな手ごたえがありました。フェスの最後はボルビトマグス。この世の終わりのような大音響。あまりのすさまじさにしだいにすごく間抜けなものにみえてくる。ノイズの懐の深さだろうか。おもわずTシャツを買う。演奏直後、汗だくになったドナルドミラー氏に、秋山、杉本は元気かい?と聞かれました。
単に音量のことだけでなく、極端にふれ幅の大きいフェスティバルで、総じてすごい楽しかった。終始裏方に徹していたキュレーターのマッツ・グスタフソンがうれしそうにしていて、来た甲斐があったというものです。お疲れさまでした。

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バスで空港へ。パリ行きの便はザヴィエと一緒だった。二人でチェックインして、お茶など飲みつつ時間をつぶす。機内にはいったところ、我々の前に偶然ウィル・ガスリーが座っていてびっくりした。ザヴィエとウィルは前にも一度飛行機でばったりあったことがあったそうで、そのときザヴィエは大蔵さんと一緒だったそうである。日本人とザヴィエの組み合わせがウィルを引き寄せる…この偶然が1000年後に神話として語られていたとしても、私にはそれを確認する術はない。

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ジャンリュックと作業。来週グラスゴーで、彼のコンピューターのための曲"signature of the room"を演奏するのだが、かれこれ四年近くもこれに取り組んでいるのにもかかわらず、いままで一度も完奏したことがなく、最終調整のためパリまでやってきてみました。前回パリのスタジオで試みたときはほぼうまくいっていたのだけど、CPUがおいつかなくてノイズだらけになってしまった。そしてそのあと、私はうっかりすべてのファイルを消してしまったのである!でもゼロからやりなおしてずいぶんスマートにできて、MAX/MSPのバージョンが5になって動作が軽くなったような気もする。今度こそできるかもしれない。ジャンリュックが夕食をつくってくれた。数年前にもこれとおなじのをつくってくれたよねと聞くと、これをつくるのははじめてだという。自分としては、いつも違う素材でいろいろな手法を用いているつもりなのだが、結果として似たような料理になってしまうのだそうだ。まるで即興演奏のジレンマのようである。

3/10
で、結局うまくいかず、当日用いるオーディオインターフェースで試さねば不安だということになり、エリックラカーサの家を訪ねる。最初から最後までちゃんとできた!会場自体に深く依拠した曲なので、どんな風に響くかはその場でやってみてはじめてわかる。ほんとに楽しみです。いろいろ話すが、ジャンリュックもエリックもエリックロメールをいいということには抵抗があるらしく、アストレとセラドンのすばらしさを伝えるのに苦労した。夜は村山さんがニンジンとセロリの炒め物的なものをつくってくださいました。

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ジャンリュックと村山さんはスペインへ旅立ち、部屋にひとりとなる。パスタをゆでて昨夜の残り物にあえてみたところすこぶるおいしかった。久しぶりにダン・ウォーブルトンにあってお茶する。ベルヴィルからモンパルナスまで歩いて、ベルトランとクスクス。

えらいばたばたしてしまっていたんですが、かろうじて『へばの』といまおかしんじ監督の新作『獣の交わり 天使とやる』(=イサク??)という強力な邦画二作は出発前にみれました。