ナイスカンパニー久米水産

またご無沙汰してしまいました。

今月はじつにいろいろなことがあった。
バイトのペースがだんだんつかめてきて、帰社後の時間を有効利用せねばという焦りが制作にも鑑賞にもよい方向に作用している…かもしれない。
そんな中、岡田利規作品『エンジョイ』は、決して共感はできないが、いや、したくないが、まぎれもなく自分が生きている現実を突きつけてくる傑作であり、しかも、内容と形式が寄り添いつつ、かつ互いに批評しあうような微妙な距離にあって、非常にいい経験だったが、30になると同時にバイトをはじめた身としてはまったく人事ではないので、だいぶ重苦しくもなった。
あと、久しぶりに倉地久美夫さんをみて、これははげしく鳥肌がたった。どう説明していいのかよくわからないが、とにかくすごい熟成のされ方である。じつは倉地さんの作品に関わらせていただくというお話をいただいたところで、背筋を伸ばした次第。
ザ・ロック・ギタリスト』の原稿に責任をかんじている部分もあり、観にいきました、『NANA2』。しかし、人はデビューをかけたゲリラライブのとき、"流されて生きるのもまぁいいんじゃないか"とか考えたりするものなんだろうか。よくわからない。映画版NANAはこれで完結だそうだが、登場人物たちはまた、なにかを乗り越えるわけでも、絶望するわけでも、決断するわけでもなく、なんとなく流されたまま終わってしまった。まぁそれ自体がよくないわけじゃないんだけど、こういう現実がある、という説得力がなんにもないんだなぁ。『DEATH NOTE』続編は、原作もここで終わっていたらもっとよかったかもというポイントできれいにまとめていて、楽しくみれた、が、あんまり小ぎれいに過ぎはするか。せっかく人が大勢死ぬのだから、死に様がもっと死んでるように見えればいいの、かなぁ。
あと、自分の制作活動としては、沖島勲監督『一万年、後…。』の作業が、あとはMAを残すのみ、というところまで完了。異次元の音、合唱など、かなりかわった関わり方をさせていただいたが、沖島監督の考える「あの世」に迫れた気がする。手応えがある。はやく出来上がらないかな。
室内楽の第四回はそれぞれハープのさまざまな魅力がみえたいいプログラムではなかったかとおもいます。やはりフォーカスを絞った企画は楽しい。ハープ運搬もたいへんではあったが、なんか楽しかった。次回は1/12(金)で、管楽器特集。江崎さん、中尾さん、関島さんというスゴい面々です。
そして数年ぶりにFBIへ。小島さんに連れて行ってもらった羊肉店が異様なうまさ。負けを認めざるを得なくなった服部君が打ちひしがれているのが不憫だった。串カツも、お好み焼きもうまかった。食べていたばかりでなく、ホースはぜんぜん響かない環境がすごくいい方向に作用した。音が目の前でストンと落ちていくようなかんじがなんとも新鮮。さらに全員音量がどんどん下がっていったのはなんだったんだろう。録音のアイディアがふくらんだ。いや、面白そうな方向にしぼんだ、というべきか。2006年はこれがライブ納め。今年はいろんな企画を立ち上げたなぁ。それらについてはまた後日振り返ろう。自分の演奏は今年もうないけれど、ひとつ録音を担当することになった企画があって、これはおもしろそう。サイレント映画生伴奏の第一人者、柳下美恵さんと、アニメーション作家にして、修行もし、メタルパーカッション奏者でもあるジャン=ピエール・テンシンさんが、カール・ドライヤーの『裁かるるジャンヌ』と共に演奏するというライブがクリスマスに、本郷教会にて。くわしくは柳下さんの http://www.ltokyo.com/yanasita/miespick.html またはテンシンさんのサイト http://puppuka.com/  をどうぞ。

と、いろいろあったわけですが、いま何より自分の精神に深く食い込んでしまったのは、いまおかしんじ監督の『おじさん天国』であり、「久米水産社歌」がずーっと頭をまわっている。ずっと観たかった映画はこれなんだ、というくらいの衝撃があり、あまねく人々におすすめしたいのだが、残念ながら昨日で終わってしまった。イカオロナミンC、地獄…、なにもかも適当のように存在しているが、同時に、世界はこのようにして成り立っているのだ、と言われているような気もしてきた。そしてまた役者さんがみんないいんだなぁ。また観たい。何度も観たい。
http://www.spopro.net/ojisantengoku/

さらに追い打ちをかけるように、ラドゥが突然はじめた手作りCD-Rレーベルの作品がすごすぎた。すごすぎて安易には聞けないくらいで、手にとってやっぱりやめておこう、というのを繰り返してしまっている。これについてはまた…。